「失敗」が次の挑戦への扉を開いた ― DOJO in 台湾が育んだ異文化理解と未来への視野

渡邊優樹さん
理工学群社会工学類4年次に台湾 in DOJO参加。2026年現在、社会工学学位プログラム修士2年。
異文化との出会いが気づかせた「自分の当たり前」
「今思えば、自分は少し硬かったのかもしれない。」
そう振り返るのは、社会工学学位プログラム修士2年の渡邊優樹さんだ。DOJO in 台湾への参加は、単なる海外研修ではなく、その後の学びやキャリア形成の方向性を大きく変える転機となったという。活動中、台湾の学生とともに地域課題をテーマとしたグループワークに取り組んだ。印象に残っているのは、台湾の学生たちの仕事の進め方だった。
自分は早めに準備し、計画的に進めたいタイプだった。一方で台湾の学生たちは「大丈夫、大丈夫」という雰囲気で、最終発表直前まで作業を続けていた。当時はその進め方に戸惑いも感じたという。
しかし、その経験は後になって大きな意味を持つことになる。
DOJO in 台湾に参加した後、渡邊さんはドイツ・ボーフム大学との都市計画ワークショップや韓国での多文化共修プログラムに参加した。そこで生かされたのが、活動中に得た異文化理解の視点だった。
「以前は、自分のやり方で進めたいと思っていた。でもDOJO in 台湾を経験してからは、『彼らには彼らのやり方がある』と思えるようになった。」
異なる価値観やワーキングカルチャーに触れた経験は、その後の国際交流における柔軟性や適応力につながった。
「英語をやらなければ」と思わせた原点

DOJO in 台湾は渡邊さんにとって、初めて本格的な海外共修に参加した機会でもあった。
日常会話ではなく、自分の考えを伝え、議論し、合意形成を行う。そこには想像以上の難しさがあった。
聞き取れない。言いたいことが伝えられない。その悔しさが、「英語を勉強しなければ」という強い動機につながった。
参加後は英語学習に取り組み、TOEICのスコアも向上した。その後、修士1年の夏にはドイツでの専門ワークショップに参加し、2026年には韓国での多文化共修プログラムにも参加している。
振り返ると、この時の苦労は失敗ではなく、その後の挑戦を支える原体験だった。
「台湾で一度苦労したことで、その後は精神的な負荷が小さくなった。とりあえず話してみようと思えるようになった。」
語学力だけではない。海外へ飛び込む心理的ハードルを下げたことも、DOJO in 台湾がもたらした大きな成果だった。
地域と商業施設の共生を考える
台湾での多文化共修で渡邊さんが取り組んだテーマは、商業施設と地域社会の共生だった。大型商業施設に隣接する池を活用し、施設利用者と地域住民が共に使える空間づくりを提案した。
その提案に対して、三井不動産からは「発想としては面白いが、実現には様々な課題がある」というフィードバックがあった。
学生としては公共的な視点から地域の活性化を考える。一方で企業には事業として成立させる責任がある。その違いを実感した経験でもあった。
興味深いのは、このテーマが活動終了後も渡邊さんの中に残り続けたことだ。
後に参加したドイツとの都市計画ワークショップでは、偶然にも柏の葉地域がフィールドとなった。そこでも再び、大規模施設と地域の関係性について考える機会を得た。
DOJO in 台湾で得た問題意識は、一度限りの学びではなく、その後の学修へと連続していったのである。

海外経験が広げたキャリアの可能性
現在、渡邊さんは動物と人との関わりを通じた教育実践について研究している。
研究テーマ自体はDOJO in 台湾の都市計画とは異なるが、「地域と人との関係性を考える」という視点では共通する部分も多い。
卒業後は、観光政策に関わるシンクタンクへの就職を予定しているが、そのきっかけの一つとなったのも韓国での多文化共修だった。
韓国でのプログラムでは、日本政府観光局ソウル事務所長による講演を聞く機会があった。旅行が人の価値観を変え、視野を広げる力を持つという話に強く共感したという。
海外経験を重ねる中で、自身もまた価値観の変化を実感していた。やがてその関心は観光分野への志望につながり、現在の進路選択へと結びついた。

プログラムを「点」で終わらせないために

渡邊さんは、こういった活動の価値をさらに高めるためには、プログラム終了後も学生が継続的に関われる仕組みが重要だと考えている。
毎回海外に行くことは難しくても、オンラインでの交流や柏の葉や筑波大学を舞台としたワークショップなど、継続的に参加できる場があれば、多くの学生が関心を持つはずだという。
学生、大学、地域、企業がつながり続けることで、プログラムで生まれたアイデアや人材育成の成果はさらに発展していく可能性がある。
単なる短期海外研修ではなく、異文化との出会いを通じて自分の価値観を問い直し、新たな挑戦への自信を得る。そして、その経験が次の学びやキャリアへと連続していく。
