「作る」から「活かす」へ―多文化共修が広げた都市計画の視野と地域への眼差し

飛田晴哉さん
理工学群社会工学類4年次にDOJO in 台湾に参加。2026年現在、社会工学博士前期課程2年。
2024年2月に実施された「台湾DOJO Sponsored by Mitsui Fudosan」に参加した飛田晴哉さん(社会工学 博士前期課程2年)は、現在、都市計画分野における法制度を研究している。
DOJOへの参加は、単なる海外研修ではなかった。台湾の都市や商業施設を題材とした実践的な課題に取り組む中で、専門分野への理解を深めるとともに、多文化環境で協働する力や、自らの将来像を見つめ直す機会となった。
実社会の課題に挑む
飛田さんがDOJO in 台湾に参加したのは学類4年次であった。同年夏にはドイツでの都市計画ワークショップへの参加も予定されており、その準備も兼ねて研究室教員から参加を勧められた。
プログラムでは、日本人学生と台湾人学生による混成チームを編成し、三井不動産が台湾で展開するららぽーとを題材として、「競争の激しい台湾市場において、どのような価値を提供できるか」という課題に取り組んだ。
飛田さんのグループが最終発表で提案したのは、日本の大手チェーン店舗だけでなく、日本各地の郷土文化や地域資源を活用した差別化戦略であった。その象徴として紹介したのが、自身の出身地である福島県の郷土玩具「赤べこ」である。
「台湾では日本の有名ブランドはすでによく知られている。だからこそ、地域文化やローカルな魅力を発信することで、より深く日本を知るきっかけを提供できるのではないかと考えた。」
大規模な商業開発を担うデベロッパーの視点から見れば必ずしも現実的な提案ではなかったかもしれない。しかし、自らの地域の魅力を見つめ直し、それを社会にどう生かすかを考えた経験は、その後の研究や進路選択にもつながっている。

都市計画を新たな視点で捉える
飛田さんは、それまでにも台湾を訪れた経験があった。しかし、都市計画という専門的な視点から都市を観察したのは今回のプログラムが初めてであった。街の構造や商業施設の役割、都市と産業の関係性などを現地で学んだ経験は、自身の専門分野に対する視野を大きく広げたという。また、台湾の教員や学生との議論を通じて、国によって都市計画の考え方や制度、官民の役割分担が大きく異なることも実感した。現在取り組んでいる法制度研究にも、当時得た視点が少なからず影響している。

「正しい英語」よりも大切なこと
DOJO in 台湾への参加前、飛田さんは英語に苦手意識を持っていた。初めて参加した国際交流プログラムでは、文法の誤りを気にするあまり思うように発言できなかったという。
しかし、台湾の学生との混成チームでの議論や現地調査を重ねる中で、その考え方は大きく変化した。
「英語を完璧に話すことよりも、自分の考えを伝えようとする姿勢の方が大切だと感じた。」
実際に、調査方法をめぐって台湾側学生と意見が分かれた場面もあった。当初は疑問を感じながらも意見を言えなかったが、その経験を通じて、自分の考えを伝えることの重要性を学んだ。
飛田さんは、DOJOを通じて身についた力として「Passion to Communicate」を挙げる。
プログラム参加に向けた英語学習の成果もあり、TOEICスコアは約100点向上した。しかし、それ以上に大きかったのは、異なる文化や価値観を持つ人々と対話することへの心理的なハードルが下がったことであった。

「作る」から「活かす」へ

当時の飛田さんはデベロッパー業界への関心が強かった。しかし、その後の学びや就職活動を経て、現在は地方創生や地域政策、産業振興といったテーマにも関心を広げている。
「都市を作るだけでなく、どう活かすかに興味を持つようになった。」
地域経済や産業のあり方、政策形成など、都市のソフト面への関心は、DOJOで取り組んだ提案とも重なる部分がある。
海外に「また会いたい人」ができた
DOJO in 台湾の成果は、学びやスキルの向上だけではない。
プログラムで出会った台湾の学生たちとは現在も交流が続いている。日本を訪れた際には再会し、一緒に食事に行くこともあるという。
「海外に、また会いたいと思える人がいる。それがうれしい。」
実社会の課題に向き合い、多文化環境の中で協働し、自らの専門性と将来の可能性を広げる。台湾DOJOは飛田さんにとって、都市計画を学ぶ一人の学生が地域と社会との関わり方を見つめ直す転機となった。

