【活動報告】地球規模課題の解決に資する教育政策提案のための多⽂化共修活動を実施しました! 

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2026.2.13


1.はじめに 

2025年12月7日〜13日を日程とし、教育政策をめぐる多文化共修活動の一環として、中国・上海市およびタイ・コンケン市の二カ国学術滞在を実施しました。本活動は、現地の大学、学生との交流、教育施設の視察、参加者同士の協働的学修を通じて、地球規模課題が各国の教育制度および教育実践の中でどのように位置づけられているのかを、体験的かつ比較的に理解することを目的としています。学類生として1名が、教育学学位プログラムおよび体育学学位プログラムから3名の大学院生がプログラムに参加し、指導・引率は人間系の教員3名が務めました。 

出発に先立ち、12月2日に事前学習を行い、本滞在を単なる視察や文化体験にとどめず、異なる教育的文脈をもつ地域において学生・研究者との交流を通じて相互に学び合う機会として位置づけることを確認しました。参加学生は、自国の教育制度や研究慣行を前提化しすぎることなく、現地での経験を相対化しながら捉える視点を共有した上で、1カ国目の中国、上海市へと向かいました。 

2.中国・上海市での学術滞在—都市・社会教育施設・大学で感じた国際性の一つの形—(12月7日〜9日) 

12月7日、上海浦東空港到着後、市域航空線および地下鉄を乗り継いで、宿泊地である華東師範大学近くのホテルに向かいました。長距離かつ複雑な移動であり、手探りでの行程でしたが、案内表示や運行の正確さによって移動は円滑に進み、都市機能としての公共インフラの高度な整備状況が強く印象づけられました。 

8日午前は上海博物館東館に向け地下鉄を利用し移動しました。途中下車をし、人民広場、南京東路、外灘などを散策、上海市内を代表する都市空間を見学しました。歴史的建造物と近代的な高層建築が併存する景観は、中国の近現代史と急速な都市発展を象徴的に示しており、都市空間そのものが歴史や価値観を伝達する装置として機能しているように思えました。 

上海博物館東館では、近代的かつ古典的な建物外観に驚き、無料での入場に戸惑いを覚えながら、古代から現代に至る中国史が一貫した構成のもとで展示されている館内空間に圧倒されました。展示動線、解説の語り口、映像資料の活用が、来館者の歴史理解を一定の方向へと導くよう精緻に設計されており、中国の学校外教育(社会教育・文化政策)が、市民の歴史認識や価値観形成において重要な役割を果たしていることを、具体的に認識する機会となりました。参加学生は「博物館そのものが強い教育的メッセージを持っていると感じた」と事後に振り返っています。 

8日午後は、留学生を対象にした高等教育の国際化に関する英語での講義を拝聴しました。グローバル化が進行する現状下での中国の高等教育戦略を、国際化に対応しようとする中国の高等教育の歴史とあわせて学ぶ機会となりました。CAMPUS-Asia 6プログラムで日本から華東師範大学に短期留学している4名の大学院生とも交流をし、中国の高等教育事情と中国文化について知る機会を得ました。 

9日は午前に豫園に訪問する機会を得ました。16世紀半ばの明時代に作られた江南式の名園である豫園は、前日に訪れた外灘から南に2kmほどの場所に位置し、さながら近代都市の真ん中にある異空間でしたが、紅葉を愛でる市民の姿にアジア共通の文化を感じました。 

9日午後は、華東師範大学外国語学部日本語学科を訪問し、参加学生の日本語による研究発表、質疑応答、日本語学科の学生・教員との研究交流が行われました。現地学生の高い日本語運用能力に支えられ、議論は研究内容や方法論、中国の日本文化理解の実情、学生の実態にまで踏み込んだものとなりました。事後の振り返りでは、「日本の大学での研究は、社会全体の課題とどこまで接続できているのかを考えさせられた」といった内省的な意見も参加者から出されました。 

3.タイ・コンケン市での学術滞在—教育改善への大学の関与—(12月10日12日) 

12月10日に上海からタイ・バンコク国際空港を経由し、コンケン市へ移動しました。タイ第二の都市コンケン市は、上海市とは対照的に、都市規模は比較的小さいものの、地域社会と大学との結びつきの強さが随所に感じられる場所でした。 

11日午前、コンケン大学インターナショナルモデル校およびバン・シーラ自治区のモデル公立学校を視察しました。前者では国際標準を意識したカリキュラムが、後者では地域の生活文化や社会的課題が教育内容に反映されており、教育の質保証と地域性との関係を具体的に考察する機会となりました。特に注目されたのは、両校が性格や教育環境が異なるものの、いずれにおいても大学が初等教育の改善に継続的に関与し、教員研修やカリキュラム開発を支援している点です。参加者は、大学と地域社会が連携して教育を支える実践例として、教育制度が抽象的な枠組みとして存在するのではなく、人と人との関係性の中で支えられていることを実感しました。 

11日午後はコンケン大学教育学部において学術交流セッションに参加した。参加学生は英語によるプレゼンテーションおよび討議を通じて、多言語環境における研究発信と対話を実践的に経験しました。また、CAMPUS-Asia 6プログラムで日本からコンケン大学に短期留学している2名の大学院生ともタイの教育事情や文化について情報共有し、共修活動に従事しました。参加学生は、多言語環境における学修が、単なる言語運用能力の問題ではなく、思考の表現様式や議論への参加のしやすさと深く関わることを実感しました。振り返りでは、「英語で議論することで、自分の考え方の癖が見えた」といった記述が見られました。本プログラムの目的の一つである「多言語理解」が進んだ経験であったといえます。 

12日午前には、コンケン大学学長への表敬訪問が行われ、大学間交流の意義や今後の協力関係について意見交換がなされました。学術交流は一過性の事業ではなく、人的信頼関係と継続的な取り組みによって発展していくものであることが共有されました。午後には大学附設博物館、寺院を拝観し、コンケン市の歴史・文化遺産について学ぶ機会となりました。 

4.事後学習と総括(12月15日) 

帰国後、12月15日に事後学習を実施し、再度英語によるプレゼンテーションを行いながら、一連の滞在を振り返りました。参加者は、中国・上海では教育が社会全体の構想と強く結びついていることを実感した一方、タイ・コンケンでは教育が人と人との関係性の中で実践されていることを強く意識したと述べています。二つの異なる教育的文脈を経験したことにより、日本の教育や研究のあり方を相対化し、今後の学修や研究に向けた新たな視点を得る機会となり、多文化共修オープンバッジを得るに値する学びが得られたといえます。 

本二カ国学術滞在は、参加者にとって異文化理解にとどまらず、教育と社会、研究と公共性との関係をあらためて考える機会となりました。都市、大学、学校といった多様な学習環境に身を置くことで得られた経験は、今後の教育研究および国際交流活動において、重要な基盤となることが今後期待されます。